結成30周年を迎えた今年、8年振りのニューアルバム『JAPANIK』をひっさげてのツアーで観客を熱狂させたモンスター・ロックバンド、シーナ&ロケッツ。そのギタリストである鮎川誠が出演したファン必見の映画が『ジャージの二人』。カラフルなジャージを纏い、独特な間とキャラクターで抜群の存在感を発揮した鮎川誠が、映画の現場について語ってくれた。
断るつもりやったのが面白そうだなに変わって。
結局、何でもやるっちゅう気になってました(笑)
—映画出演のオファーを受けたときはどう思いました?
「中村(義洋)監督は、僕らの友達の崔(洋一)監督の弟子だったこともあって、最初にお会いしたときから、崔監督のことや飼っているラブラドールレトリバーのことで話が盛り上がったんです。でも映画のお話は僕には大役過ぎるし、アルバム『JAPANIK』の仕上げに浸かりたいと思っていたので、お断りするつもりでした。それでもう一度、中村さんに会ったら、“鮎川さんしかいない”みたいにおだてられて(笑)。僕じゃないとやれないなんて光栄でありがたいことだし、セリフに自信がないと話したら、大きな紙に書いて出してくれるっていうし、舞台になる北軽井沢にも魅せられるものがあったしね。断るつもりやったのが面白そうだなに変わって。結局、何でもやるっちゅう気になってました」
—脚本を読んだ感想は?
「僕も親父だから脚本を読んで思い当たるところはたくさんあったよね。ポツッポツッと言うセリフがリアルで、淡々とした感じもいいなぁと思いました。後、犬が出てくるのも楽しみでした」
—映画では犬もいい味出してましたね。
「ええ。犬のミロとはすぐに友だちになりました。ミロは特別な訓練をうけたタレント犬ではなくて、ありのままのシベリアンハスキーの可愛い男の子でね。ワガママで人間がたくさんいる中でいつもビクビクしてる。それが好きでしたね。仲良くなりたいと思えました。でも現場ではシーナが独占してしまって(笑)。シーナは撮影中ずっと一緒にいてくれたんだけど、シーナの横にはいつもミロがいたんです(笑)」
—撮影現場では約束通り、セリフを書いた紙を出してもらえました?
「撮影の初日は、セリフを書いた大きな紙を用意してくれてて安心しました。でも場面ごとに新しいセリフをスタッフがマジックでおっきく書く訳やから、手を取らせたら悪いなと思ってね。2日目からはなるべくセリフは見ないようにしたんです。みんなもそれを察してくれたのか、いつの間にか紙はなくなりました。ただ時々ポカッと忘れてしまって(笑)。特にダンカンさんとのシーン。それでダンカンさんは僕のことをいい加減でセリフを覚える気もないみたいに言ってたけれども、決してそうではなかったんです(笑)。ただダンカンさんは僕のことをブログに書いてくれたりして、その優しい心が嬉しかったですね。共演した大楠(道代)さんも素晴らしかったし、この映画でいろいろな人と会えたことは嬉しかった。ファミリーみたいに1つの物を作る仲間の強い結束を感じました」
—息子を演じた堺雅人さんの印象は?
「僕はローリングストーンズの映画なんかにはやたら詳しいんですけど(笑)、テレビや映画に疎いので、失礼なことに堺雅人君の存在を知らなかったんです。でも最初に会ったとき、堺君が“宮崎(出身)なんです”って言ってくれて、 “九州なんね!? 俺は福岡よ”って話が盛り上がりました。堺君は優しくて、気遣いができる本当にいい子。しかも賢くて、インディペンデントな精神に満ちてる。本当に演劇のために生きてる人ですね。堺君と友達になれて、一緒に映画をやったことは僕の自慢です。今、堺君は(NHK大河ドラマ)『篤姫』で将軍の役をしよるから、僕は将軍と友達だって自慢してるんです(笑)。で、その次に将軍になるのが松田翔太で、僕はお父さんの松田優作も息子の龍平も翔太も友達だから、将軍2人とも友達なんです。これは相当、自慢になると思う(笑)」
—注目して欲しいシーンは?
「布団を干すシーンはよかったな。リハーサルのときから、そこで本当に生活してる親子が布団を干してるみたいな感覚になれたのがよかった。後は薪割りのシーン。なかなかうまくいかなかったこともあったけど、映画の中ではすごくカッコよく割ってて、薪割り名人みたいになってるから(笑)。でも真似をしないように。危険ですから(笑)」
—意外でしたが、ジャージがすごく似合ってましたね。
「おぉ、ありがとう。僕の小学校の頃はトレパンに体操シャツだったからこういうジャージを着ることがなかったんで、初めての体験で新鮮でした。気持ちよかったし、こんなにいいもんかと。すぐにシーナ&ロケッツみんなでジャージ着るぜ!って4人分買いました。ブラウンに赤と黄色の線が入ってるちょっとレゲエっぽいのを」
—ゆったりと時間が流れるような、この映画の独特な世界観をどう感じました?
「みんなが自分に置き換えたり、想像してみたり、共有できる映画だなぁと思いました。答えは風の向こうにあるっていう感じの、観る人たちに自分で答えを見つける楽しみを残してるみたいな感じじゃないかな」
映画のみんなから強いエネルギーをもらって
すごくいいレコーディングができた
—映画撮影の体験が音楽にいい影響を及ぼしたことは?
「撮影中はみんなの力がひとつになる強さをズーッと感じていたんです。50人以上のクルーがスケジュールをやり繰りしながら映画を作っていく。撮影では中村監督が“本番!”って言うと、いろいろな場所に隠れてる人もみんなが“本番” “本番”って言って、気配を殺すんですね。それでカメラだけがカラカラカラカラカラってシーンを写して、中村監督が“オッケー!”っていうとワーッて動き出す。そんな風にみんなが祈って、その祈りが重なるような感覚が映画の神髄かと思いました。シーンがスゴかったり、色が綺麗やったり、いろんな素晴らしいものが映画の中にはあるけど、目に見えない部分っていうのかな。そのシーンの向こうにみんなの重なった心があることが素晴らしかった。瞬間に集中する強いエネルギーを映画のみんなからもらったので、その後レコーディングに戻ったときには、考えている以上の場所にロックが僕らを連れていってくれた。ちょっとうまく言えんけど、すごくいいレコーディングができたし、いいアルバムに仕上がったと思ってます」
—本当にいい体験だったんですね。
「撮影の3週間でいい刺激をもらった感じです。本当に楽しかったですよ。中村監督は明るくて、いつも笑ってる。きっと自分の作品をお客さんの目線で見てるし、客観的な可笑しさもちゃんと見えてる人なんだろうね。意図的な作った可笑しさじゃなくて、自然な笑いがいつも現場にあふれてました」
—では、また役者もやってみたいと思いますか?
「いやいや、これは1回のことだから嬉しくやれたんだと思います。もしまた機会があれば嬉しいに決まってるけど、今回でバンドと映画と半々にできんちゅうことがよくわかったしね。映画撮影中にはギターも弾けんぐらい、全部が映画に向いてないと自分の気が済まない感じになって。それはそれでよかったけどやっぱり自分はバンドをやりたい。バンドが一番。自分の性に合ってるんです。僕とシーナ、浅田、川島、ナベのいつものメンバーで毎日、新しい音を作る。昨日やったことは関係なく、今日出てくる一番新しい音をみんなでプレイする。そのシーナ&ロケッツのロックが僕らの一番やりたいことだし、それをみんなに聴いて欲しいし、ライブで会いたいですね。今度作った『JAPANIK』をぜひたくさんの人に聴いて欲しいと思います」
copy light 2008『ジャージの二人』製作委員会
■ジャージの二人
[センチュリーシネマほかで大ヒット公開中]
■監督・脚本/中村義洋 ■出演/堺雅人/鮎川誠/水野美紀/田中あさみ/ダンカン/大楠道代 ほか
■芥川賞・大江賞作家、長嶋有の『ジャージの二人』を、『アヒルと鴨のコインロッカー』、『チーム・バチスタの栄光』の中村義洋監督が映画化。会社を辞めたばかりの32歳の僕は、54歳のグラビアカメラマンの父に誘われ、北軽井沢の山荘にやってくる…。不思議な距離感の父子が山荘で過ごす夏の数日間。日々の暮らしの中にある、可笑しいこと、切ないこと、そして、ちょっとずつ前向きに変わっていく心の移ろいが、ゆったりした時間の流れとともに描き出される。








